最近の電子レンジにはボタンひとつで適切な温度に温めてくれる「あたためモード」が搭載されています。
昔は、パッケージに時間が書かれているようなもの以外を温める場合には、過去の経験からくる大体の勘などを頼りに時間を設定し、加減しながら温めなおすなど、物を適切な温度に温めるという作業にも手間がかかっていました。
しかし、あたためモードができたことにより、(どれくらいの頻度で使われているかは別として)物を温める作業の手間が減少したように思います。
では、昔の電子レンジに存在した手間は消えてなくなってしまったのでしょうか?
ラリー・テスラー氏は、手間=複雑性について以下のような法則を提唱しています。
あらゆるプロセスには本来備わっている複雑性があり、「臨界点」以降はその複雑性は簡略化できず、移動のみ可能である。
このテスラーの複雑性保存の法則に従って考えると、昔の電子レンジに存在していた、温める物によって時間を設定したり、状況に応じて時間を延長したりするような手間は、消えてなくなってしまったわけではなく、電子レンジの内部に移動しただけであるといえます。
道具の利用者の立場から見ると、消えてなくなったのでも道具の中に移動したのでも、自分が気にする必要がなくなったという点では同じです。
しかし、道具を設計する立場の私たちにとっては、複雑性の移動は非常に重要な考え方です。
ユーザビリティを高めようとしたとき、何も考えずに複雑性を道具側に移し、人間側から複雑性を奪えばよいわけではありません。
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